慶應の中でも本流と言われる慶應普通部。
ここは2月1日が受験日ということもあり、本命組の受験率が高くなっています。
今年度の実質倍率は3.3倍で、2017年の2.9倍・2018年の3.1倍から徐々に上がってきています。
附属校人気を証明する推移と言えるでしょう。
では、次年度以降に慶應普通部を狙う方々の為に、各教科の分析を記載したいと思います。
算数の配点は100点。試験時間は40分。途中式を書くところもあり、1問当たりにかけられる時間は約3分です。
慶應中等部と同様、大問9~10、小問13~14問を、制限時間40分という中で解き切るスピードが必要になってきます。
難易度はそれほど高くはありませんが、中等部のような典型問題は少なく、その場で考える必要があります。
例年「図形」「速さ」「場合の数」の分野からの出題が多いです。
また普通部は中等部と違い「考える力」を重視します。
そのため途中式も採点対象です。
その問題をどう考え、どう解いたのかというプロセスが大事になってきます。
合格ラインは、学校からの発表はありませんが、8割前後と言われています。
今年は2の整数問題でつまづいたお子さんが多かったのではないでしょうか。
3の食塩水は典型的な「落とせない」問題と言えるでしょう。
4の速さは、グラフが書ければ正解できたと思います。
立体図形で切断の問題が出題されましたが、難易度はさほど高くなかったので、あまり差はつかなかったと思います。
8の場合の数が若干難しく、ここで差がついた可能性もあると思います。
1位:平面図形
2位:計算
3位:速さ
スピードが大事なのは勿論ですが、描く力も必要になってきます。
問題数がそこまで多くないので、時間に追われることはあまりないですが、とはいえ余裕があるわけでもありません。
基礎力を高め、正確に早く解くこと。
そして部分点をきちんと取れるよう、途中式の書き方などの練習も必要になってくるでしょう。
また、たまに途中で難しい問題が紛れ込むこともあるので(=足止め問題)、解く順番を見極めることも大事になってきます。
慶應普通部の問題は頻出問題が決まっているだけでなく、パターンもある程度決まっています。
「展開図の問題」「角度・面積・長さの問題」「速さと時間と燃費の関係の問題」など定番問題は徹底的に仕上げてから臨みましょう。
国語の配点は100点。試験時間は40分。記述形式もあり、1問当たりにかけられる時間は約1分です。
大問は3~4問構成で、読解問題が2~3題と漢字の独立題1題から構成されています。
読解問題は通常、物語文1題に随筆文や論説文という組み合わせ。
詩や短歌などの韻文が出題されることもあります。
設問は記号選択式問題と抜き出し問題が中心で、短い字数制限付きの記述問題もあります。
慶應らしくスピードが要求される入試となっています。
ここ数年、大問4題構成でしたが、今年は物語文と随筆文の読解問題2題と、漢字の独立題1題10問の3部構成でした。
物語文は海外小説の翻訳作品であり、時々出題されています。
今年は丁寧に本文を読み取ったうえで、思索的・抽象的な比喩表現の内容をどれだけ的確に把握できたかがカギとなったようです。
1位:人としてどう生きるか
2位:父母
3位:その他の人間関係
出題分野が多岐にわたるため、日ごろから韻文も含めて様々な分野の文学に触れておく必要があります。
また「何の話なのか」、「いつごろの話なのか」、「どんな場面なのか」など、「話の設定や状況を、最初にしっかりと把握できるようこと」が、普通部の小説対策としては重要になります。
その上で40分という短い時間で対応する必要がある為、単純なスピードだけでなく、的確な時間配分も必要になってきます。
過去問でその感覚を養うようにしましょう。
また出来るなら読むスピードアップも行いたいところ。
6000字程度を読みこなし、内容を理解する必要があるので、読むスピードが速ければ有利になります。
社会の配点は100点。試験時間は30分。漢字指定もあり、1問当たりにかけられる時間は約40秒です。
幅広くかつ正確な知識を求められます。
その上で1問にかけられる時間が非常に短く、悩んでいる暇はないと思った方が良いでしょう。
また普通部最大の特徴は、12歳という子供の視点を超えた、大人びた知識と視点が必要になってくる点です。
例えば「トレーサビリティ」といった、大人の社会常識がないと対応しづらい問題が出たりします。
今年も解答箇所は60に上りスピードがカギを握ったものと思われます。
日本を訪れた外国人の感想など、オリンピックを意識し日本の国際環境を問う問題が目につきました。
また鎌倉幕府の力の変化を説明する記述問題があり、これの出来が合否をわけたものと思われます。
知識と思考力が求められる内容でした。
1位:日本の国土と自然
2位:近代・現代(明治~昭和)
3位:人物についての歴史
オールラウンドな学力が必要になってきます。
単に知識を覚えているだけでなく、その知識を組み合わせ、関連付けながら社会について自ら考えていく学習が必要でしょう。
時事問題も単に最近のニュースを知ってるだけでは不十分です。
大人っぽい視点が求められることから、出来れば早いうちから父親と社会について議論できるような能力を身に付けるといいでしょう。
稚拙でもいいので、まず自分の意見を持てるようにすることです。
さらに大人としての一般常識も身に付けておくといいでしょう。
「鶏卵」「タクシー料金」「家庭の電気料金」「郵便切手」などの選択肢の中から、「一般的に売り手に直接現金・カードで支払わないもの」、「売り手が自由に値段を決められないもの」を選ばせる問題など、中学入試の社会の知識の枠組みを超えた、「大人にとっての常識」「生活に関わる知識」を問われる個性的な問題が出ます。
算数や国語と同じく配点が100点もあるため、苦手なままにしておくと足を引っ張る可能性もあるので、要注意です。
理科の配点は100点。試験時間は30分。1問当たりにかけられる時間は約45秒です。
慶應普通部の真骨頂は、理科にあると言っても良いでしょう。
労作展などを見学した方ならわかると思いますが、入学してから中学生でかなり高度な学習を行います。
それは知識の習得ではなく、実験や観察などから結論を導く力を養うものです。
その下地を求める普通部の理科の問題は、知識を身に付けているだけでは難しいでしょう。
過去には「旬の食べ物、クリについての問題」で「特別な道具を使わずにクリの実をイガから取り出すにはどうすればよいか」や、「群れを作る動物についての問題」で出題されている「スズメバチの腹の模様とはねを図に描きなさい」や、「アブやカミキリムシのなかまには、なぜスズメバチに似た模様を持っているものがいるのか」など、個性的な問題が出題されています。
問1はグラフを見て、それが何のグラフかを選択する問題。
選択肢は地学・化学・物理と幅広く、広い知識と考察力が必要となる問題でした。
問2は火山の噴火と地層に関する問題。
問3は空気中と水中の音の伝わり方に関する問題。
問4は慶應普通部でおなじみの、自然観察に関する出題で、作図や記述も含まれています。
1位:いろいろな動物・季節と動物
2位:植物のつくりとはたらき
3位:昆虫
慶應普通部らしい問題に対応するためには、身の回りの現象・科学への関心を高める必要があります。
普段からそうした訓練をするほか、早めに過去問演習を行う必要があると思います。
同時にスピード感を持って解く必要もあります。
「基礎知識を確認するだけの問題」、「中学入試で定番のグラフの読み取り問題、計算問題」は、知識さえあれば即答可能であり、最優先で解くことが必要です。
そのためにも、まずは基礎を固める勉強を行いましょう。
また、どうしても時間が足りなくなってくるので、どの問題を後回しにするのか、といった時間配分の訓練も必要になってくるでしょう。
コメントフォーム